Anthropic公式「Morning Brief」スキル徹底解剖!AIに最高の朝ダッシュボードを作らせるプロンプト設計思想

Anthropic(Claude)の公式スキル/プロンプトとして設計された「Morning Brief(朝のブリーフィング)」をご存知でしょうか?
朝起きてわずか30秒でその日のスケジュールとやるべきタスクを把握できる機能ですが、そのシステム指示書(SKILL.md)を読み解くと、プロンプトエンジニアリングとUI/UX設計の最高峰のお手本と言える緻密な設計思想が詰まっています。
本記事では、この「Morning Brief」スキルの全体像、情報の収集・仕分けロジック、美しいHTML/SVGの生成指示、そして開発者が真似すべき設計エッセンスを詳しく整理・解説します。

Morning Briefとは

Morning Briefは、ユーザーが朝に「/morning」と呼び出すか、平日の定期タスクとして実行されることで、カレンダー・未返信メール・チャット(SlackやTeams等)を横断巡回し、「今日1日の流れと重要事項を把握できる1枚の美しいHTMLページ(またはスクリーンショット)」を生成するスキルです。

多くの通知やタスクに圧倒されるのではなく、「落ち着いて今日という日を俯瞰し、静かにスタートを切る」というコンセプト(This page is my 30-second morning glance: one calm view of the shape of my day)のもとで緻密に設計されています。

Morning Briefスキルの全体構造

Morning BriefのSKILL.mdは、以下のように明確な役割ごとのセクションに分かれて指示が組み立てられています。

  • Context(目的・世界観): 朝30秒で落ち着いて把握するためのデザインコンセプトを定義。
  • Gather(情報収集): カレンダー、メール、チャット、明日の事前準備事項を優先順位をつけて取得。
  • Sort(情報の仕分け): 取得した膨大な情報を「要対応」と「解決済み」の2つに厳格に分類。
  • Write(出力・デザイン): 1日の負荷を地形(Terrain)として描き、3つの時間帯に要約するHTML/SVG仕様。
  • Voice(語り口): 余計なお世辞や命令、謝罪を排除したトーン&マナーの徹底。
  • Build / Verify(自律検証・堅牢化): 外部依存を断ち切り、Playwrightでレンダリングして品質を確認する手順。

プロンプトから学ぶ秀逸な設計思想

一日の負荷を「地形」として描画するビジュアルアンカー

このスキルの最も象徴的な特徴が、カレンダーの予定の詰まり具合を1本の線の「地形(Terrain)」としてSVG描画させる指示です。

予定が多い忙しい日は標高の高い険しい山になり、予定が少ない穏やかな日は「静かな水面」のような平坦な直線になります。

プロンプト内の指示例:
「1日の負荷をカレンダーから判定(HEAVY/NORMAL/OPEN)。端から端まで途切れない1本の地形ストロークを描くこと。落ち着いた日は穏やかな水面のように平坦にする。決して存在しない山をでっち上げてはならない。」

さらに、一日を「午前・午後・夕方以降」という3つの幕(Acts)に分割し、それぞれの時間帯に応じた具体的な一言を添えることで、視覚的・直感的に今日のペース配分が掴めるよう工夫されています。

「要対応」と「解決済み」の2軸に絞り込む仕分けロジック

朝の忙しい時間帯に長大な未読リストを見せられても人間は処理しきれません。Morning Briefでは、すべての情報を以下の2つのリストに厳密に分類します。

  • Needs attention(要対応): 今日中に自分が動かないとコストが発生するもの(誰かが自分待ちでブロックされている、今日で期限が切れる、明日以降取り返しがつかなくなるもの、明日の会議の事前準備など)。
  • Resolved(解決済み): 最近解決したこと(自分が不在中に別の人が回答してくれたスレッド、キャンセルされた会議、リリース完了の報告など)。

さらに、「自分がすでに絵文字でリアクション済み、または返信済みのスレッドは除外する」といった、実際のビジネスコミュニケーションに即したきめ細やかな除外判定ルールが盛り込まれています。

語り口(トーン&マナー)の徹底した引き算

プロンプト内には「Voice」として、AI特有の無駄な表現を厳禁するネガティブプロンプトが定められています。

  • 命令しない(Never command): 「返信が必要です」ではなく、事実のみを述べる。
  • 謝罪しない(Never apologize): 「情報があまり見つかりませんでした」ではなく、予定がなければ静かな日としてそのまま伝える。
  • 無駄なお世辞・応援をしない(Never pad): 「今日も一日頑張りましょう!」などの不要なクッション言葉を排除する。
  • 内部プロセスを語らない(Never narrate process): 「この項目を表示した理由は…」といったAIの事情を語らない。

過剰な親切心を削ぎ落とすことで、「まるで静かに今日を手渡してくれる友人のようなトーン」を実現しています。

エラーを防ぐフォントのBase64埋め込みと自律検証

デザイン性の高い見出し用フォント(Fraunces)を読み込む際、Google Fontsなどの外部CDNに依存するのではなく、「woff2フォントファイルをBase64化してHTML内に直接埋め込む」よう指示されています。

これにより、ネットワークの切断や外部プロキシ制限によるフォント崩れを未然に防ぎ、「コーヒーを片手に開いた瞬間に一発で完璧に表示される」状態を担保しています。また、生成後にPlaywrightで自動スクリーンショットを撮影し、崩れがないか自律的に検証するフローまでプロンプトに含まれています。

Claudeへの作業引継ぎを行う「Seed(作業指示の種)」ボタン

ユーザーから「Include action buttons」という明確な指定があった場合のみ、要対応タスクの横にClaudeへのアクションボタンが配置されます。

ボタンを押すと、新しいClaudeのセッションが立ち上がり、即座に「返信の下書き作成」や「会議の論点整理」といった具体的な作業を始められるよう、URLパラメータ(Seed)が組み立てられます。

Morning Briefのプロンプト(SKILL.md)の要点抜粋

実際のプロンプトで記述されている中核部分の英語指示の抜粋です。

Context:
This page is my 30-second morning glance: one calm view of the shape of my day and the few things worth knowing, so I start oriented instead of overwhelmed.
Draw one warm, hand-sketched single-file HTML page. The top half is a visual anchor: the day drawn as terrain with a few words underneath. The bottom half is important things: what needs me, what's already sorted, and any extra sections I've asked for.

Voice:
Observe and hand over. Never command ("you need to reply" -> state what's true) - never apologize ("wasn't able to find much" -> a quiet day is a quiet day) - never pad ("you've got this!") - never review ("genuinely packed") - never narrate process ("surfacing this because...") - never reproach ("you missed this" -> "...in a thread you weren't in").

Visual anchor:
Classify the day from the calendar alone - HEAVY (>=5h in meetings or a 3+ cluster) - NORMAL - OPEN (<=1 short meeting). This sets the headline's tone and the terrain's vertical scale.
Drawing - one SVG ~840x170. One unbroken terrain stroke edge to edge, elevation = load; a calm day flattens to still water - never invent mountains.

プロンプトエンジニアリング・スキル開発への応用と学び

  • 出力形式をビジュアル(HTML/SVG)まで完全にコントロールする: テキストを出力させるだけでなく、ユーザーが最も認知負荷なく理解できるUIまでAIに描画させる。
  • 情報の「捨てる基準」を明確にする: 多くの情報を集めても、表示するのは本当に重要な2軸だけに絞り込む。
  • 「書かないこと」を徹底的に指定する: AI特有の余計な丁寧さや謝罪を禁止することで、実用性の高いツールに昇華させる。
  • スタンドアロンで動く堅牢性を担保する: 外部リソース依存をなくし、Base64埋め込みなどで確実に1回で動くコードを出力させる。

まとめ

Anthropicの「Morning Brief」スキルは、AIを単なる質疑応答ツールとしてではなく、「ユーザーの生活に寄り添う最高のパーソナル秘書兼デザイナー」として機能させるためのベストプラクティスが凝縮されています。

自身の業務自動化や、AIエージェントのスキル・カスタム指示(SKILL.md)を作成する際のお手本として、ぜひ参考にしてみてください。